BLOG 楕円紀行

About Koichi Murakami

23th 代表強化を最優先に

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東西の大学リーグはほぼ順位が確定し、大学選手権の組み合わせも見えてきた。今季も、関東大学対抗戦1位の早稲田大学、関東大学リーグ戦1位の関東学院大学が優勝争いの軸になるが、総合力では早稲田が他大学を圧倒しており、関東学院がどこまでその差を詰めることができるかが見どころになる。しかし、関東学院は難敵・大東大と2回戦でぶつかる可能性がある。爆発的な突破力を誇るNO8フィリピーネを中心にした大東大は、リーグ戦でも関東学院を苦しめている。関東学院の有賀キャプテンは、法政を破って優勝を決めた記者会見で大東大と当たる可能性を記者から聞かされ、やや落胆した表情を見せた。嫌な相手なのだろう。ここが正念場となるかもしれない。

関西大学Aリーグでは同志社大学の充実が際立つ。昨季から、仙波、平という看板CTBコンビが卒業で抜けたものの、今森、大橋のCTBコンビが穴を埋め、正確なプレースキッカーでもあるSO君島、WTB正面、宇薄、1年生FB釜池など、大学では図抜けた才能を誇るBKラインが仕上がっている。東海大仰星高校1年生で全国制覇の原動力となり、天才と騒がれた正面も大学4年生。卓越したランニングスキルに高い評価を得ながら、ひ弱さが指摘されてきたが、ここにきて身体を張ったプレーでチームを引っ張れるようになった。タックルも強く、打倒・関東勢を果たす意欲に燃えている。次回、このコラムを書くのは年末になるが、その頃には、すでに大学選手権ベスト4が出揃っている。どんな顔ぶれになっているか楽しみだ。

トップリーグも後半戦が12月3日より開幕。全勝の三洋電機ワイルドナイツを、連覇を狙う東芝府中ブレイブルーパスが追う展開だが、優勝争いは1月9日の最終戦までもつれ込みそうだ。三洋と東芝の残り試合は、ともに5試合。勝ち点差は「2」。つまり、三洋、東芝ともに残り試合を全勝した場合、各試合で勝ち点「4」に加えて、4トライ以上のボーナス点「1」をどれだけ加算していけるかで優勝が決まる。後半戦開幕直前、優勝圏内にいるのは、トヨタ自動車ヴェルブリッツ、NECグリーンロケッツ、ヤマハ発動機ジュビロである。サントリーサンゴリアス、神戸製鋼コベルコスティーラーズが上位争いをかき回せば、日本選手権出場枠のトップ4争いは混沌とする。こちらも目が離せない。

シーズンクライマックスで盛り上がる時期ではあるが、前回のコラムでも触れた、日本の2011ワールドカップ(W杯)招致について書いておきたい。11月17日深夜(18日未明)、秩父宮ラグビー場にある日本ラグビーフットボール協会事務局には多数の報道陣が詰めかけた。アイルランド・ダブリンで開催されたIRB(国際ラグビーボード)理事会の投票結果を待つためである。午前1時前、第一回目の投票で南アフリカが落選し、日本とNZが決選投票に残ったことが知らされた。大本命だった南アフリカの落選で報道陣は色めき立ったが最終的に日本はNZに敗れた。後の報道で、投票結果は12−9であったことが分かった。投票は無記名だから推定の域は出ないが、NZに投票したとされるアイルランド、スコットランド、ウエールズ(各2票保有)のいずれかが日本に投票していれば結果は逆だった。日本がアピールした「ラグビーのグローバル化」はある程度の理解を得られたということだ。結果分析についてはラグビーマガジンや新聞などに詳しい。しかし、問題を一つに集約させれば代表チームの弱さに行き着く。世界ランキングで1位のNZ、2位の南アに、日本は16位(開催国決定時)。国内ラグビー人気の低さ、観客動員に対する不安も、代表チームが強ければ解消される問題である。また、2003年W杯で世界に日本ラグビーの質の高さをアピールしながら、2004年秋の欧州遠征でスコットランドに100点失点で敗れたのは、そのイメージを完全に消し去ってしまった。かえすがえすも致命的な敗北だったと言わざるをえない。

あの遠征には多くの主力選手が不参加だった。代表チームが最優先されない日本ラグビーの問題点がW杯招致にダメージを与えるということを関係者がどれくらい認識できていたかは疑わしい。同じ失敗を2度と繰り返してはならない。自戒の念も込めて書いておきたい。代表チーム強化を最優先すべきだ。トップリーグの観客数減少など、苦しい状況を打開するのは代表チームが魅力的で強くなることしかない。アジア諸国への普及も日本代表が強く、魅力的であれば、その国で試合をするだけで大きな効果が上がるだろう。2007年W杯まで指揮を執ることになるヘッドコーチのジャン・ピエール・エリサルド氏にかかる期待は大きいが、代表強化に関わる関係者、各チームは彼が力を発揮できる環境を整えることに全面的に協力しなければならない。その環境下で彼が不適格と判断されるなら、早急に次の手を打つ。2006年のテストマッチシリーズ、そして2007年W杯の戦績が今後の日本ラグビーの行く末を決める。悠長なことは言っていられないのだ。W杯は、2011年で終わりではない。4年おきにやってくる。日本ラグビーのエネルギーを代表強化に集約させるところから、W杯招致へ新しい一歩を踏み出してもらいたい。