BLOG 楕円紀行

About Koichi Murakami

41th 外国人選手から学びたいこと

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6年前を迎えるジャパンラグビートップリーグは、9月5日、サントリーサンゴリアス対三洋電機ワイルドナイツという好カードで幕を開ける。今季は、IRB(国際ラグビーボード)が発表した新ルールを導入しての戦いになるが、加えて、外国人選手の出場枠が2名から3名に拡大されることで、リーグ全体の活性化が期待されている。
選手登録締め切りが6月末(日本人選手は8月末までに追加登録ができる)となっているため、この6月には各チームから新外国人獲得の報が相次いだ。なかでも、ラグビーファンを驚かせたのが、サントリーサンゴリアスが発表した元オーストラリア代表ワラビーズのキャプテン、ジョージ・グレーガンの加入である。グレーガンといえば、オーストラリア代表(1994年から2007年)のSH(スクラムハーフ)として、世界最多の139キャップを保持する選手だ。1999年W杯優勝、2003年W杯準優勝。2007年は準々決勝で敗れたが、キャプテンとして59キャップを獲得するなど、世界ラグビー屈指のビッグネームである。
サントリーの清宮克幸監督は、「世界トップの心技体を見せることで、選手たちの見本となってくれることを期待しています」と語っている。35歳とはいえ、まだまだ肉体的に衰えていないグレーガンが入れば、当然同じポジションの日本人選手は出場機会を失う。そのことについて清宮監督に尋ねると、「日本人SHは3人いますが、マイナスになることは何もない」と言い切った。世界トップの経験と技能は、日本人選手に刺激を与え確実に彼らを成長させるということだ。

その通りだと思う。日本代表が世界のトップレベルに届かない理由の一つに、プレッシャー下で正確なプレーができないことが挙げられる。激しいプレッシャー下での試合経験の少なさもあるが、それより、考えてプレーしているかが問題だという気がする。試合中の状況に合わせた正確な判断を常に意識してプレーできているか、自分のプレーに最後まで責任感を持っているか、トップリーグ見ていると、ここに疑問を持つプレーが少なくない。グレーガンから学ぶべきは、そうした判断と責任感あるプレーだと思う。
グレーガン他、トップリーグ入りしたビッグネームは枚挙にいとまがないのだが、ヤマハ発動機ジュビロに加入した元NZ代表オールブラックスのルーベン・ソーンにインタビューする機会があった。ソーンは、オールブラックスで50キャップを誇り、スーパー14(南半球スーパークラブ選手権)のクルセイダーズでは、7度の優勝に貢献している。なぜ、クルセイダーズは常勝軍団になったのか。彼はこう答えた。「監督のロビー・ディーンズ(現オーストラリア代表監督)が優秀だったことは確かです。クルセイダーズの強さは選手間の絆の深さです。なぜ、そうなるのか。ディーンズは、選手を選ぶときに、技術だけではなく人格を見るからです」。
普段から立派な人間は必ず選手として優れている、とは言い切れないが、試合中のプレッシャーのかかる場面、僅差勝負での大事な局面で的確な判断ができるかどうか、仲間のために献身的にプレーできるかどうかは、普段からの行動を見ていれば優秀なコーチには予測できるということだろう。
試合に勝つためには、爆発的なスピードやパワーを持つ選手も必要だが、人間として真の強さを持つ選手を見極める視点も大切にすべきだ。せっかく世界トップレベルの選手たちがたくさん来日したのだ。日本の選手達にはそんなことを感じ取って成長してもらいたいと思う。意識の高い選手が増えれば、日本ラグビー全体がレベルアップし、それが日本代表の強さにもつながるはずである。