BLOG 楕円紀行

About Koichi Murakami

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アジア五カ国対抗で五連覇を飾った日本代表は、6月5日から開幕するパシフィックネーションズカップ(PNC)に臨む。フィジー、トンガ、サモア、日本による総当たり戦だ。日本より同格以上と見ていい国々との戦いは、エディー・ジョーンズヘッドコーチ率いる日本代表の実力を如実に表すものとなるだろう。トンガとサモアは、すでに2015年ワールドカップの出場権を得ており、この秋、組み合わせが決まる。
組み合わせにはその時の世界ランキングが影響する。当然、上位陣は比較的楽な組分け、日程になる。世界ランキングを上げるため、今大会は重要であり、手を抜くことはないはずだ。

今年はほとんどの試合が日本で行われる。昨年はすべて日本開催の予定だったのだが、東日本大震災による原発事故の影響でサモアだけの来日となった。自国も津波の被害を受けたサモアとして、「日本のことは他人事ではない」と来日を決断してくれたのである。そんな好敵手がまたやってくる。サモアとの戦いは、最終戦(6 月17日 秩父宮ラグビー場)。このとき、日本代表は優勝を争う位置にいられるだろうか。
今のラグビーは通用しないのでは? 力負けするのでは? ファンのみなさんも、不安と期待が相半ばしているだろう。A5Nで韓国の強力タックルに苦しんでいるようでは、トンガ、サモアにはひとたまりもないと考えるのが普通だ。現日本代表の実力に対する評価は分かれる。チーム作りの方法がまったく違うからだろう。昨秋のW杯に臨んだ日本代表は個人の力強さを軸にしたオーソドックスなチームだった。BKラインの幅も広く、最終的に外国人選手が多くなったのは個の強さが必要な戦い方だったからだ。
しかし、現在の日本代表はコンパクトにボールを運ぶ。ボール保持者の周囲に分厚く人を配し、テンポよくボールをリサイクル。機を見て、大きく横に広がりながら防御を振り切る。このユニットで動くポジショニングのことを「シェイプ」と呼ぶ。PNCを前にした合宿が5月30日から都内で始まったが、そこでも新しい攻撃オプションを加えながら、シェイプを磨いていた。昨季までより約束事の多いラグビーだから、それが上手く機能すれば多少メンバーが入れ替わってもチームとして機能する。そのことは、国内二冠を達成したサントリーサンゴリアスが証明した。

エディー・ジョーンズ HCは、型どおりに勤勉に動くのは日本人の得意なところとし、厳しいフィットネストレーニングを課しながら選手達を鍛え上げている。ただし、廣瀬俊朗キャプテンは、A5Nで韓国に苦戦した時「もう一度個人のスキルを大事にしなければ」とコメントした。形を気にしすぎれば個の力が引き出されない。個々の能力で海外の列強に届かない日本代表だからこそ、個の力を最大限に引き出す組織でなければならない。
もちろん、現日本代表にも、「自由な判断」はある。5 月19日に行われた香港代表戦の先制トライにも、そのことは表れていた。FL 望月の縦突進でできたラックの左サイドに右 WTB 廣瀬が走り込み、 SH からのパスを受けて田村につないだトライだ。このとき、廣瀬が走り込んだのは瞬時の状況判断で、田村もそれに対応して左に開きながらパスを受け、個人技でトライを奪った。2人が判断で横に広がったからこそ、防御にはスキができた。型どおりに動かない田村優は、今後の日本代表を飛躍的に強くする可能性を秘める存在だ。

パワーアップしながら走り続けられる肉体改造も着々と進む。個と組織を並行してバランスよく伸ばし、2015年ワールドカップ時に最強チームになるのが現在のチームの目標だが、その始まったばかりの強化の中で、フィジー、トンガ、サモアといかに戦うか。スクラム、ラインアウトのセットプレーは安定するか、相手の激しい圧力の中でテンポよくボールが出せるか、パワフルな選手が揃う防御ラインの前でぎりぎりのパスが通せるか。国際舞台での経験が浅い選手が多い日本代表の試練のときだ。

廣瀬キャプテンは言う。「半分の選手はフィジーやサモアと戦ったことがない。自分たちがやってきたことを信じて、やってみるしかない。どうなるのか、楽しみですよ。ウォークライが目の前で見られるのも楽しみ。自分らしくやりたい」。選手達からの信頼厚いキャプテンの肝の据わったコメントだった。