Column-コラム 08/27
 
Column 2004.10.04 コラム
 
第8回 トップリーグ開幕
 

2年目のトップリーグが開幕して、楽しみな週末が続いている。リコーブラックラムズの連勝スタートは正直驚いた。ディフェンス・ラインの出方が他のチームとまったく違うのも興味深い点だ。

気づいているファンのみなさんも多いと思うが、現在、日本のほとんどチームは、FW近くの防御を分厚くし、外側の選手は内側の選手より少し下がり気味に相手ラインにプレッシャーをかけていく『ピラー・ディフェンス』というシステムを採用している。FWの近くで抜かれることを避け、斜めの面を作って、タッチライン際に相手を追い出していくようなスタイルだ。長所は、外側に追い込むことで、抜かれるスペースがタッチライン際だけになり、大きな傷を負わないこと。ただし、スピードのあるチームには大きくゲインされる短所がある。

ところが、リコーは、ディフェンスラインの一番外側の選手が一番前に出て、内側に追い込むようなスタイルをとっている。通称『アンブレラ・ディフェンス』。傘のようなラインになる。これをやられると、大きくワイドにボールを動かしたいチームは、外側のスペースを塞がれるのでやりにくい。実はこれ、最近、イングランドのプレミアシップや、南アフリカ代表などが採用しているスタイルで、そのうち日本でも流行するであろうディフェンス・システムなのだ。短所は、内側を抜かれたときに、カバーディフェンスの戻りが遅くなること。思い切って前に出るから、すれ違われると取り返しがつかないわけだ。

きっと、オールドファンは、それって「シャローディフェンスじゃないの」と不思議がられるだろう。少し前への出方が違うようだが、相手のスペースを奪うという考え方は同じである。これだから海外のコーチングを後追いをしていると怖い。いつのまにか日本が失ったモノを逆輸入して戦うことになるのだから。リコーのディフェンス・システムは、今後も注目である。

さて、どうしても書いておきたいのは、ヤコ・ファンデルヴェストハイゼンだ。

NECグリーンロケッツが獲得した現役南アフリカ代表SOは、9月上旬に来日しながら、あっという間に日本のラグビーを見切って、存分のプレーを披露している。まだ周囲の選手と呼吸の合わない面はあるが、瞬時に相手との力量差を見抜き、思い切ってパスを回したかと思えば、堅実にキックで陣地をとるなど、ゲームメイカーとして世界トップレベルの貫禄を見せている。今の小学生、中学生が彼を見ていれば、必ずや将来、日本人の名SOが現れるだろう。少しでも長く日本でプレーして、手本になってもらいたい選手だ。「ヤコ」という名を、お忘れなく。

○村上 晃一氏略歴    

村上晃一(むらかみ・こういち)
ラグビージャーナリスト。

1965年3月1日京都市生まれ。40歳。
京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。
現役時代のポジションは、CTB/FB。

86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より同誌編集長。98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。ラグビーマガジン、ナンバー(文藝春秋)、スポーツヤア(角川書店)スポルティーバ(集英社)などに主にラグビーについて寄稿。「バッティングの正体」、「魔球の正体」(ベースボール・マガジン社)など野球の単行本編集も手がける。スカイパーフェクTV「ジェイスポーツ」のラグビー解説も98年より継続中。99年、03年のワールドカップでは現地よりコメンテーターを務めた。
著書に「空飛ぶウイング」(洋泉社 99年9月発行)がある。

 
 
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