Column-コラム 24/27
 
Column

2006.02.14 コラム

 
第24回 世界のラグビーシーンはこれからが面白い
 

 前回のコラムからすっかりごぶさたしてしまいました。申し訳ありません。年末年始の全国大会では、伏見工業高校のパスプレーと堅実なタックルにしびれ、早稲田大学の優勝には有言実行した清宮監督の勝負強さを痛感。トップリーグ終盤戦、マイクロソフトカップ、日本選手権と息つく間もなく試合が続いて、何を書いてもタイミングを逸するように思っているうちに、ここまで来てしまいました。なんて言い訳はやめて本題に入りますね。

 国内ラグビーはまもなく終了するが、世界のラグビーシーンはこれからが面白い。北半球6か国対抗「シックスネイションズ」、南半球スーパークラブ選手権「スーパー14」が開幕し、僕が解説者として携わっているスポーツ専門局JSPORTSでも、世界最高峰のラグビーを満喫できる季節がやってきた。
  シックスネイションズは、イングランド、ウエールズ、アイルランド、スコットランド、フランス、イタリアが総当たりで覇権を争う北半球随一の選手権だ。フランスが優勝候補と言われたが、開幕節でスコットランドに敗れる波乱が起きている。ちなみに背番号9のSHは日本代表ヘッドコーチ(HC)、ジャン・ピエール・エリサルド氏の子息である。エリサルドHCはフランスの敗因について「SHがまったくゲームをコントロールできていなかった。よく言っておきます」と語っていた。
  スーパー14は、昨年まで10年間、プロ化時代の先端を走ったスーパー12を拡大したもので、ニュージーランド(5チーム)、オーストラリア(4)、南アフリカ(5)の地域ユニオンを母体に期間限定のプロチームを結成して2月〜5月までの14週間にわたって総当たり戦を行い、トップ4で最後のプレイオフで優勝を決める。「世界最高峰のアタッキングラグビー」と称される通り、グラウンドを広く使ってめまぐるしくボールが動き、コンタクトプレーは骨の軋む音が聞こえるほどの迫力である。
  チームの作り方だが、たとえばニュージーランド(NZ)のオークランドを本拠地とするブルーズは、オークランド、ノースハーバー、ノースランドの傘下地区からメンバーを選ぶ。選ばれなかった選手は他のスーパー14参加チームから声がかかれば、そちらでプレー。これがドラフト移籍。ブルーズには、トヨタ自動車で今季までプレーしたLOトロイ・フラベルも参加する。フラベルの場合は、オールブラックス復帰を目指しての帰国。三洋電機に所属するSOトニー・ブラウンのように期間限定で5月まで南アのシャークスでプレーし、日本に戻る選手もいる。いずれにしても、日本でプレーした選手が世界最高峰のリーグで戦っているといのは観戦の楽しみ倍増である。

 両選手権は、他の大会に先んじた時期に行われるため、そのシーズンのプレーやレフリングの傾向を見ることもできる。JSPORTSで放送されたイングランド対ウエールズ、そしてスーパー14のウエスタンフォース対ブランビーズ(ともにオーストラリア)の試合を見て感じた点がある。現代ラグビーでタックルされても立っていることの重要性だ。
  サイズが大きくパワフルな選手が多いイングランドに対して、ウエールズはPK、FKのポイントから迷い無く速攻を仕掛け、昨年の同大会を制したと同じ戦法で攻め続けた。まったく動きを止めないスピーディーなラグビーはサイズの小さいチームが見習うべきスタイルである。しかし、負傷者が多いこともあってワイド展開の起点になる選手がいなかったのが痛かった。イングランドはこの攻めをガッチリ受け止めると、倒した選手からボールをもぎ取り、縦に突進して防御を切り裂いていった。タックルされても倒れず、次々にサポートの選手にボールをつなぐ。一方、スーパー14では、タックルされた後、倒れた選手のボールを奪う通称「ジャッカル」というプレーでターンオーバーが続出した。その攻防は見応えがあったのだが、ここで感じたのは、オーストラリア型のラック主体のラグビーが勝てなくなっている現状である。たった2試合で結論は下せないが、日本でも東芝のスタンディング・ラグビーが黄金時代を迎え、一時期無敵を誇ったサントリーのラック主体の継続ラグビーが勝てなくなっている。ルール上、ボールの奪い合いを長く見る傾向と、ジャッカルの技術向上がラックからの素速い展開を難しくしているようなのだ。世界の流れはそのまま日本にも当てはまる。絶対的な戦法はないし、ルール変更などによっても波はある。またラックの時代が来るかもしれないが、今はスタンディング・ラグビーの時代ということなのだろう。

 ここが重要なのだが、立ってつなぐラグビーはサイズが大きいチームにしかできないと思われがちだが、小さくてもできるはずだ。今季の日本でも高校大会を制した伏見工業や学生王者早稲田大学はパスを連続させることで防御を突破していた。伏見工業の高崎監督はラグビーマガジンのインタビューにこう答えている。「力のない人間でも芯をずらしてボールを動かせばつなげるんです。タックルを受けてもボールを絶対に止めない。芯をずらすところはしつこく練習します」。高校大会で4連覇を達成した啓光学園もサイズは小さいがヒットの強さにこだわり、立ってつなぎ、パスで抜くスタイルを実現させた。日本最高峰のトップリーグでも、今後は、倒れないことに加えて、パスで抜くスタイルを磨いたチームが勝つことになるはずだ。
 
というわけで、シックスネイションズ、スーパー14をまだ知らないみなさん、ぜひ一度見てみてください。世界を知れば、日本が見えます。


○村上 晃一氏略歴    

村上晃一(むらかみ・こういち)
ラグビージャーナリスト。

1965年3月1日京都市生まれ。40歳。
京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。
現役時代のポジションは、CTB/FB。

86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より同誌編集長。98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。ラグビーマガジン、ナンバー(文藝春秋)、スポーツヤア(角川書店)スポルティーバ(集英社)などに主にラグビーについて寄稿。「バッティングの正体」、「魔球の正体」(ベースボール・マガジン社)など野球の単行本編集も手がける。スカイパーフェクTV「ジェイスポーツ」のラグビー解説も98年より継続中。99年、03年のワールドカップでは現地よりコメンテーターを務めた。
著書に「空飛ぶウイング」(洋泉社 99年9月発行)がある。

 
 
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